深堀り!栄養士実力認定試験過去問題~解剖生理学③~

解剖生理学からの「深堀り!」3回目は、
泌尿器系・腎臓に関する問題です。
2022年度問題11です。正答率は61.2%。
Q
(2024年)問題11. 腎泌尿器系についての記述である。
正しいのはどれか。
(1) 健常者の原尿は、1日に 1.0 ~ 1.5 L 生成される。
(2) 右腎は、左腎よりもやや高い位置にある。
(3) 腎小体は、糸球体とボーマンのうからなる。
(4) 腎臓と膀胱をつなぐ管を、尿細管という。
⇒×(1) 健常者の原尿は、1日に 120 L ~ 180 L 生成される。
×(2) 右腎は、左腎よりもやや高い位置にある。
◎(3) 腎小体は、糸球体とボーマンのうからなる。【正答】
×(4) 腎臓と膀胱をつなぐ管を、尿管という。
皆さん、腎臓(泌尿器系)、苦手ですか?
腎臓に関する問題は過去5年間で5問出題されていますが、
その正答率は61.2~23.3%と低空飛行。
濾過、再吸収、電解質、濃縮‥‥
確かにややこしいのは分かります。
ポイントを整理していきましょう。
泌尿器系とは?
尿を生成・排泄する臓器です。
腎臓で尿をつくり、尿管が膀胱へ送り、
膀胱に貯めてから排泄する。
排泄時に通る体外へ続く管が尿道です。
腎臓ってどんな臓器?
腎臓は尿をつくる臓器!
ここで絶対に覚えておきたい言葉は...
①腎小体 =(糸球体 + ボウマン嚢)
…原尿をつくる
②ネフロン=(腎小体+ 尿細管)
…原尿⇒尿にする
③抗利尿ホルモン(バゾプレッシン)
…尿量を減らすホルモン
④レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系
…腎臓に働きかけて、血圧を調整する
尿の役割って?
尿の役割は、体内の水分(体液)を浄化し、
量、浸透圧、pHを最適に保つこと
私たちのからだの中では、様々な
「要らないもの」「有害なもの」が生じています。
これをそのままにしておくと、
からだの状態を保つことができません。
じゃあ外に出そう!
という働きの一つが尿の生成と排泄です。
さらに、大人のからだの約60%が水分。
つまり、体内の水分(体液)の量や内容が
適切じゃなくなるということは、
からだの60%が「おかしい」ということになってしまいます。
腎臓についてもう少し詳しく...
★腎臓のつくり
・数:2つ
・形状:ソラマメ状
・位置:腰の上辺りにあり、
右腎は、左腎よりもやや低い位置にある
(右腎の上に肝臓があるため)
・皮質:片方の腎臓の皮質には
100万個のネフロン(=腎単位)がある
腎小体:糸球体(毛細血管)とボウマン嚢からなる
血液を濾過して原尿(180L)をつくる
尿細管:尿細管を取り巻く毛細血管との間で
様々な物質の分泌と再吸収を経て、尿ができる
→ネフロン={ 腎小体(糸球体+ボウマン嚢)+ 尿細管 }
・髄質:8個の腎錐体を形成している
ネフロンでつくられた尿が送られる
・腎杯:尿を一時的に集めるカップ
・腎盂:尿を尿管へ送り出す
★腎臓のはたらき
・尿を生成する:尿量は健常人で1日800~1600ml
・体液量を一定に保つ(尿量の調節)
→抗利尿ホルモン(バゾプレッシン):
視床下部下垂体後葉から分泌され、
水の再吸収を促進し尿量を減らす
→レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系:
Na⁺再吸収とK⁺排泄を促し、水分減少を補う
レニン:糸球体近接細胞から分泌され、
アンジオテンシンを生成
アンジオテンシン:副腎皮質からの
アルドステロン分泌を促進
アルドステロン:集合管(尿細管の最終部)の
Na⁺再吸収とK⁺排泄を促進
・体液の浸透圧を一定に保つ(尿中のNa⁺などのイオン排泄の調節)
・体液のpHを一定に保つ(尿中のH⁺イオンの排泄調節)
→ヒトの血液のpHは7.4±0.05と
弱アルカリ性に調節されている
体液中の過剰なH⁺を排泄し、
HCO₃⁻を再吸収することで調節している
・不要物質の除去(尿素や尿酸などを水に溶かして排泄)
・有用物質の保持(グルコース、アミノ酸などの再吸収)
・ホルモンの産生・分泌(造血にかかわるエリスロポエチン、
血圧調整にかかわるレニン)
出典:出典:人体の構造と機能 第5版 医歯薬出版株式会社
栄養科学シリーズNEXT 人体の構造と機能 解剖生理学 第3版 講談社
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▶Columnist Profall
協会事務局スタッフ M・Y
管理栄養士
日本女子大学卒業
大手食品メーカーの研究職を経て、現在に至る。
3児のママ。