深堀り!栄養士実力認定試験過去問題~生化学①~
さて、以前「解剖生理学」が不人気だと言いましたが、同じくらい試験の正答率が低く、
不人気なことが察せられる「生化学」です。でも、生化学は栄養学の基礎…
「意外とハードル高くないかも…」と思ってもらえる「深掘り」になるように頑張ります!
まず1回目の深掘りは、2022年の問題15、糖質についての問題です。
正答率は63.6%。
正答は文末に掲載します。
(2022年)問題15. 糖質についての記述である。正しいのはどれか。
(1) ガラクトースは、五炭糖である。 (2) グルコースは、ケトースである。 (3) スクロースは、グルコースとフルクトースからなる。 (4) アミロースは、分岐構造をもつ。
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似たようなカタカナの物質名が並んでいます💦
そもそも、「糖質」ってどんなものなんでしょうか?
糖質とは?
糖質は、有機化合物のなかの、アルコールのなかの、炭水化物のなかで、
体内に吸収されてエネルギー源になれる化合物です。
★化学の復習 ・化合物というのは、2種類以上の元素が化学結合で結びついてできた物質のこと ・元素は物質を構成する基本的な成分で、元素を構成する最小単位が原子 ・原子は原子核と電子でできていて、この電子を介して原子同士がくっつくのが化学結合 ・原子同士が結合すると、分子の状態になる
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★糖質の説明を詳しく! ・有機化合物は炭素「C」を含む化合物のこと ・アルコールは炭化水素(炭素「C」と水素「H」)の水素原子「H」をヒドロキシ基「-OH」に置き換えた化合物。 つまり、アルコールは「C」「H」「O」で構成されている。 ・炭水化物は「C」「H」「O」が、「C」と「H₂O(水)」というかたちでくっついている化合物 「C」は3個以上あり、2個以上のヒドロキシ基「-OH」とアルデヒド基「-CHO」、 またはケトン基「>C=O」を持っている。 ・炭水化物のうち、体内に吸収されてエネルギー源になれるものが「糖質」
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★糖質の分類 ・糖質の基本単位(これ以上分解できない、一番小さいかたち)は「単糖類」 ・単糖類の分類: ①官能基による分類:アルデヒド基「-CHO」が1個→アルドース ケトン基「>C=O」が1個→ケトース ※官能基とは、有機化合物の特性などを決める原子の集まり ②炭素数による分類:3個→三炭糖(トリオ―ス) 5個→五炭糖(ペントース) 6個→六炭糖(ヘキソース) ③構造による違い:光学異性体:同じ構造なのに空間的な配置が違うもの、D型とL型 アノマー:5個以上の炭素が環状(わっか)につながったときに、 炭素に結合した原子の配置が違うもの、α型、β型 ・主な単糖類:グルコース(ブドウ糖):六炭糖(ヘキソース)、アルドース、エネルギー源! フルクトース(果糖):六炭糖(ヘキソース)、ケトース、甘い😋 ガラクトース:六炭糖(ヘキソース)、アルドース リボース:五炭糖(ペントース)、アルドース、RNA・ATP・補酵素などの成分 デオキシリボース:五炭糖(ペントース)、アルドース、DNAの成分 ・主な二糖類:二糖類は、単糖類が2つグリコシド結合(水がとれて分子同士がくっつく)したもの スクロース(ショ糖):グルコース+フルクトース:砂糖に多く含まれる マルトース(麦芽糖):グルコース+グルコース:水あめに多く含まれる ラクトース(乳糖):グルコース+ガラクトース:乳汁に多く含まれる ・主な多糖類: デンプン:アミロース:α-グルコースが直鎖状につながり、らせん構造をとる アミロペクチン:α-グルコースが直鎖状につながり、 枝分かれした網状の構造をとる、もち米 グリコーゲン:グルコースの貯蔵型、α-グルコースが直鎖状につながり、 枝分かれした網状の構造をとる セルロース:食物繊維、β-グルコースが直鎖状にならび水素結合している
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カタカナの物質名がたくさん!
解剖生理学②で深掘りした「消化・吸収」にも出てきた糖類の名前は、必ず覚えておきましょう。
小腸でスクラーゼが分解→スクロース(グルコース+フルクトース)
小腸でマルターゼが分解→マルトース(グルコース+グルコース)
小腸でラクターゼが分解→ラクトース(グルコース+ガラクトース)
糖質の代謝のポイント
問題には出てきませんが、糖質の代謝を理解せずに、栄養士は務まりません。
糖質は生体エネルギーの材料です。
ポイントを整理しましょう。
まずは‥‥
★生体エネルギーって? ・物質が化学反応によってそのかたちを変えていく過程で、エネルギーが生じる ・生体内で生じたエネルギーは、「ATP」という高エネルギーリン酸化合物のかたちで蓄えられる ・様々な生命活動のために、ATPのエネルギーが使われる
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★糖質の代謝 ・グルコースは、解糖系、クエン酸回路、電子伝達系を経てエネルギーに変換される (→変換されたエネルギーはATPとして蓄えられる) ・解糖系:すべての細胞の細胞質気質で行われる グルコースからATPを生産する過程で、酸素(O₂)が無くても大丈夫 O₂があるとき(好気的条件) ①グルコース→②ピルビン酸+(④ATP-②ATP)+(②NADH+②H⁺) O₂がないとき(嫌気的条件) ①グルコース→②乳酸+④ATP-②ATP
・クエン酸回路:ミトコンドリアのマトリックスで行われる 解糖系でつくられたピルビン酸2分子が酸化分解を受けてアセチルCoAとなり、 クエン酸回路に入り、酸化分解されていく ①ピルビン酸→①アセチルCoA このときに①CO₂と①NADH+①H⁺ができる ①アセチルCoAがクエン酸回路に入って… ②CO₂と③NADH+③H⁺、①FADH₂、①GTP(ATPになるもの)ができる クエン酸回路での酸化分解の補酵素として働くのが、ビタミンB₁、ビタミンB₂、ナイアシン ・電子伝達系:ミトコンドリアのクリステにある 解糖系・クエン酸回路でできたNADH+H⁺、FADH₂が、酸化的リン酸化によって ADPとリン酸からATPをつくる ①NADH+①H⁺からは2.5分子のATP、①FADH₂からは1.5分子のATPができる ・1分子のグルコースからできるのは‥‥ 解糖系:②ATP ②NADH+②H⁺→電子伝達系→⑤ATP クエン酸回路:②NADH+②H⁺→電子伝達系→⑤ATP ⑥NADH+⑥H⁺→電子伝達系→⑮ATP ②FADH₂→電子伝達系→②ATP ②GTP→②ATP ⇒合計32分子のATP
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解糖系、クエン酸回路の課程の物質名もできれば覚えておきたいところ…
学生時代、図を繰り返し書き写して暗記しました!
さらに、糖質の代謝の中で重要な2点を極々サラッと‥‥
★グリコーゲン ・グリコーゲンは糖質を貯蔵しておくかたちで、多糖類 ・肝臓のグリコーゲンは血糖の供給源 ・筋肉のグリコーゲンは運動するときのエネルギー源
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★糖新生 ・糖質が不足したときに、ピルビン酸やアミノ酸、グリセロールをグルコースに変えること ・主に肝臓で行われ、ごくわずかに腎臓でも行われる
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さて、ようやく問題の正答です。
ガラクトースもグルコースもヘキソース(六炭糖)、
スクロース(ショ糖)はグルコース+フルクトース、
アミロースはα-グルコースが直鎖状につながり、らせん構造をとる
つまり、正答は「(3) スクロースは、グルコースとフルクトースからなる。」です。
出典:栄養科学イラストレイテッド 生化学 第3版 羊土社
栄養科学シリーズNEXT 人体の構造と機能及び疾病の成り立ち 生化学 第2版 講談社
Nブックス 生化学の基礎 建帛社
※建帛社
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▶Columnist Profall
協会事務局スタッフ M・Y
管理栄養士
日本女子大学卒業
大手食品メーカーの研究職を経て、現在に至る。
3児のママ。