深堀り!栄養士実力認定試験過去問題~生化学②~
生化学からの2回目の深掘りは、2024年の問題14、たんぱく質についての問題です。
正答率は63.6%。
正答は文末に掲載します。
(2024年)問題14. アミノ酸とたんぱく質についての記述である。 正しいのはどれか。 (1)たんぱく質を構成するアミノ酸は、D型である。 (2) 不可欠(必須)アミノ酸は、20種類である。 (3)α-ヘリックス構造は、たんぱく質の2次構造の一種である。 (4)グルタミン酸は、塩基性アミノ酸である。
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アミノ酸がたくさんつながって1つの分子となっているのが、たんぱく質です。
まずは、アミノ酸について見直していきましょう。
たんぱく質、アミノ酸の代謝について
アミノ酸の基本構造は、炭素(C)にカルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-N H₂)、
水素(H)が結合した主鎖と、そのアミノ酸の性質を決める官能基(側鎖)が結合しています。
化学、有機化学が苦手な方には、ちょっと「わけが分からない…」かもしれません💦
炭素(C)は他の物質とつなげる手を4本持っています。
3つの手はそれぞれ、
カルボキシ基(-COOH)、アミノ基(-N H₂)、水素(H)とつないでいます。
この形がアミノ酸のデフォルトの部分で、「主鎖」です。
そして、最後の1つの手をどんな側鎖とつなぐのかで、アミノ酸の種類が決まります。
さらに、4本のうち、側鎖とつなぐ手がどこの位置なのかで、L-型とD-型に分けられます。
(鏡面異性体)

★アミノ酸の種類 ・たんぱく質を構成するアミノ酸は20種類で、すべてL-型 ・側鎖の構造によって7つのグループに分けられる ①脂肪族アミノ酸:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン ②ヒドロキシアミノ酸:セリン、スレオニン ③酸性アミノ酸:アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン ④塩基性アミノ酸:アルギニン、リジン、ヒスチジン ⑤含硫アミノ酸:システイン、メチオニン ⑥芳香族アミノ酸:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン ⑦イミノ酸:プロリン ・水への溶けやすさで分類される ①親水性アミノ酸:水に溶けやすい ①グリシン、②セリン、スレオニン、 ③アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン ④アルギニン、リジン、ヒスチジン、⑤システイン ②疎水性アミノ酸:水に溶けにくい ①アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、⑤メチオニン ⑥フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、⑦プロリン ・体内で合成できるかどうかで分類される ①必須アミノ酸:体内で合成できない、9種類 ①-②バリン、ロイシン、イソロイシン、②-①スレオニン、 ④-①リジン、ヒスチジン、⑤-②メチオニン、 ⑥-②フェニルアラニン、トリプトファン ②非必須アミノ酸:体内で合成できる、11種類 ①-①グリシン、①-②アラニン、②-①セリン、 ③-①アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン ④-①アルギニン、⑤-①システイン、⑥-②チロシン、⑦-①プロリン
・組み込まれる代謝経路による分類:消化・吸収後、アミノ基が外れ、炭素骨格は糖質もしくは 脂質の代謝経路に組み込まれて代謝される ①糖原性アミノ酸:①-②-①バリン、①-①-②グリシン、①-②-②アラニン、②-①-②セリン、 ③-①-②アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン ④-①-①ヒスチジン、④-①-②アルギニン、⑤-①-②システイン、 ⑤-②-①メチオニン、⑦-①-②プロリン ②ケト原性アミノ酸:①-②-①ロイシン、④-①-②リジン ③糖原性かつケト原性のアミノ酸:②-①-①スレオニン、①-②-①イソロイシン、 ⑥-②-①フェニルアラニン、トリプトファン、 ⑥-②-②チロシン
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アミノ酸20種類、特に必須アミノ酸9種類の名前は、試験前にブツブツ唱えていた記憶が…。
でも、栄養機能食品のCMやパッケージなどでよく見かける名前もありますよね。
我が家のサッカー部男子たちも、コーチから「試合前にBCAAゼリーを飲め!」との指示を受け、
買わされています。
パッケージからは、BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)の他に、アルギニンやリジンなど、
数種類のアミノ酸が配合されていることが分かります。
アミノ酸が2~49個くっついているのが「ペプチド」!

★ペプチド結合 ・隣り合ったアミノ酸のカルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-N H₂)が、 水(H₂O)を離してくっつくこと つまり、アミノ酸の主鎖同士が結合して、ペプチド主鎖になる
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★ペプチドの分類、種類 ・オリゴペプチド:2~10個のアミノ酸がペプチド結合しているもの 「〇〇ペプチド」の「〇〇」には、数を表すギリシャ語が入る 2個→ジペプチド、3個→トリペプチド、4個→テトラペプチド ・ポリペプチド:11~49個のアミノ酸がペプチド結合しているもの ・生理活性ペプチド:生体内で役割をもつペプチド バソプレシン(腎臓での水の再吸収を促進) ガストン(胃酸とペプシンの分泌促進) グルカゴン(肝臓でのグリコーゲン分解を促進) インスリン(細胞へのグルコース取り込み促進により、血糖の低下) レプチン(摂食行動と代謝をコントロール) エンドルフィン(鎮痛作用)
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生理活性ペプチド、解剖生理学や臨床栄養学などでもよく聞く物質名がありますね。
アミノ酸が50個以上くっついているのが「たんぱく質」
つまり、長くつながった高分子のペプチドのことを「たんぱく質」と言います。
★たんぱく質の分類 ・形状による分類:①繊維状たんぱく質:コラーゲン、ケラチン、ミオシン、フィブリンなど ②球状たんぱく質:繊維状たんぱく質以外のもので、 ペプチド鎖(長く1本につながったペプチド)が 複雑に折りたたまれて楕円形になっている ・組成による分類:①単純たんぱく質:アミノ酸だけでできたたんぱく質 アルブミン、グロブリンなど ②複合たんぱく質:アミノ酸以外に糖質、脂質、金属なども結合しているたんぱく質 ムチン、血漿リポたんぱく質、ヘモグロビン、ミオグロビンなど ・機能による分類:①酵素たんぱく質:アミラーゼ、トリプシンなど ②輸送たんぱく質:ヘモグロビン、血清アルブミン、トランスフェリンなど ③貯蔵たんぱく質:ミオグロビン、フェリチンなど ④情報たんぱく質:さまざまな受容体、ホルモン ⑤収縮たんぱく質:アクチン、ミオシン ⑥防御たんぱく質:イムノグロブリン
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★たんぱく質の構造 ・たんぱく質は種類によって特異的な高次構造(立体構造)をとっている ・1次構造:どんなアミノ酸がどんな順番でつながっているのかという構造 つまり、「アミノ酸の配列順序」で、DNAの配列に従っている
・2次構造:ペプチド主鎖の空間的な配置を示す構造 ①αへリックス構造:らせん状 ②βシート構造:平面(シート)状、もしくはプリーツ(びょうぶ折り)状 ③ランダム構造:①、②以外 ・3次構造:球状たんぱく質の「複雑に折りたたまれて楕円形になっている」構造 アミノ酸の側鎖同士が近くなるため、その間で結合などが生じている ・4次構造:三次構造をもつペプチド鎖が複数集まって結合し、 1つの機能をもつたんぱく質複合体となっている構造
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アミノ酸とは?
問題は分類と構造についてですが、代謝についても超重要な項目です。
糖質よりややこしいかも…と思っている方もいるかもしれませんが、
簡単なポイントだけあげておきます。
★たんぱく質・アミノ酸の代謝 ・たんぱく質はトリペプチド~アミノ酸といった小さい分子に分解されてから代謝される ・たんぱく質の分解(消化)は、胃と小腸で行われ、小腸で吸収される 胃:ペプシン:たんぱく質→ポリペプチド(ペプトン)(長めのペプチド) 十二指腸:トリプシンとキモトリプシン:ポリペプチド(ペプトン)(長めのペプチド) →ポリペプチド(短め)、オリゴペプチド 小腸粘膜上皮細胞:ペプチターゼ:ポリペプチド(短め)、オリゴペプチド →トリペプチド、ジペプチド、アミノ酸 ・アミノ酸は、エネルギー源である = ATPを生産する ・アミノ酸プール:アミノ酸は、体たんぱく質の原料→常に蓄えが必要なので、 一定量のアミノ酸が血中にある アミノ酸がプールされている(溜められていること)を示している ・窒素出納 = 窒素アミノ基の「窒素(N)」の、摂取量と排出量のバランス からだの栄養状態の指標の一つ ・アミノ基転移反応:アミノ酸の代謝・合成を制御する反応 アミノ基転移酵素によって起こされ、反応にはビタミンB₆がかかわる 全てのアミノ酸はアミノ基転移酵素の作用を受けて、 アミノ基を2-オキソグルタル酸に渡し、グルタミン酸にする。 (この時、元のアミノ酸は代わりに2-オキソグルタル酸のオキソ基をもらう。) グルタミン酸は、ミトコンドリアに運ばれ、酸化的脱アミノ反応によって アミノ基が外され、アンモニア(NH₃)が生成される。 ※肝機能の検査として測定されるAST・ALTはアミノ基転移酵素の一種 ・オルニチン回路:アンモニアは有毒なので、肝臓のオルニチン回路でATPを使いながら無毒化され、 尿素となり、尿中に排出される
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アミノ酸、ペプチド、たんぱく質について、少し整理できましたか?
では正答を見てみましょう。
たんぱく質を構成するアミノ酸は、すべてL型であり、
不可欠(必須)アミノ酸は9種類、
α-ヘリックス構造は、たんぱく質の2次構造の一種であり、
グルタミン酸は、酸性アミノ酸である
つまり、正答は「(3) α-ヘリックス構造は、たんぱく質の2次構造の一種である。」となります。
出典:栄養科学イラストレイテッド 生化学 第3版 羊土社
※建帛社
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▶Columnist Profall
協会事務局スタッフ M・Y
管理栄養士
日本女子大学卒業
大手食品メーカーの研究職を経て、現在に至る。
3児のママ。