深堀り!栄養士実力認定試験過去問題~生化学③~

生化学からの3回目の深掘りは、2024年の
問題16、脂質についての問題です。
正答率は55.8%。
Q
(2024年)問題14. 脂質についての記述である。
正しいのはどれか。
(1) ドコサヘキサエン酸(DHA)は、
n-3系多価不飽和脂肪酸である。
(2) ホスファチジルコリン(レシチン)は、
単純脂質である。
(3) オレイン酸は、必須脂肪酸である。
(4) コレステロールは、胆汁酸から合成される。
⇒◎(1) 【正答】
×(2) ホスファチジルコリン(レシチン)は、
複合脂質である。
×(3) オレイン酸は、必須脂肪酸ではない。
×(4) 胆汁酸は、コレステロールから
合成される。
脂質について、絶対おさえて
おかなきゃいけないポイント👇!
☆脂質は水に溶にくい!
☆脂質の構成成分で最重要なのは、脂肪酸!
☆脂肪酸からエネルギーを産生するための、
最初の分解が「β酸化」!
それぞれ、見ていきましょう。
脂質は水に溶にくい
脂質は、分子内の電子に偏りがない(極性が無い)
ため、性質の違う水には溶けにくいのです。
「水と油」、混ぜてもすぐに分かれてしまいます。
じゃあ、食事から摂った脂質が、血液中に
混ざって運ばれるのって、難しいのでは?
そこで、脂質はちゃんと血液中を流れるように、
たんぱく質とくっついて血漿リポたんぱく質
(LDL、HDLなど)になります。
「LDL」「HDL」って、
他の科目でもたくさん出てきますね。
脂質の構成成分で最重要なのは、
脂肪酸!
脂肪酸は、炭素原子が鎖状につながり、
その一方の端にカルボキシル基(-COOH)が
ついているものです。
脂肪酸の種類と名前、過去問題に出てくるものを
チェックします!
①二重結合の有無
飽和脂肪酸
=炭化水素鎖内の二重結合が無いもの
パルミチン酸 など
不飽和脂肪酸
=炭化水素鎖内の二重結合があるもの
二重結合が1つ
=一価不飽和脂肪酸
オレイン酸
二重結合が2つ以上
=多価不飽和脂肪酸
リノール酸、α-リノレン酸、
アラキドン酸、EPA、DHAなど
必須脂肪酸
=生体内で必要な不飽和脂肪酸で、
生体内で合成できないもの
リノール酸、α-リノレン酸、
アラキドン酸、EPA、DHA など
非必須不飽和脂肪酸
=生体内で必要な不飽和脂肪酸で、
生体内で合成できるもの
オレイン酸
n-〇系
=二重結合が、炭素鎖のどこにあるのか、
〇の数字でわかります。
②炭素数
中鎖脂肪酸
=炭素数が8~12個のもの
長鎖脂肪酸
=炭素数が12個より多いのもの
パルミチン酸、オレイン酸、
リノール酸、α-リノレン酸、
アラキドン酸、EPA、DHA など
脂肪酸の分類の方法として覚えておくのは、
①二重結合の有無、②炭素数。
①の中で、二重結合有りの不飽和脂肪酸は
さらに、二重結合の数、位置、
体内でつくれるかどうかで分類されます。
問題に出てきた
「ドコサヘキサエン酸(DHA)」は、
「n-3系多価不飽和脂肪酸であり、
必須脂肪酸でもある。
そして、炭素数が22個なので、
長鎖脂肪酸でもある。」となります。
脂肪酸からエネルギーを産生するための、
最初の分解が「β酸化」!
脂肪酸からエネルギーを産生するために、
つながった炭素を短くしないと!
ということで、炭素鎖を2個ずつ切断していく
のが、「β酸化」です。
ミトコンドリアのマトリックスで行われます。
β酸化を繰り返し、炭素がどんどん少なっていき、
最終的に「アセチルCoA」という、
クエン酸回路に入れる物質になる。
さらに、β酸化の過程では、
FADH₂とNADH+H⁺も生じる。
これが電子伝達系に渡されると、
エネルギーが産生される。
「クエン酸回路」と「電子伝達系」。
前々回の糖質のところでチェックしましたね。
β酸化を繰り返した分だけ、
アセチルCoAと
FADH₂とNADH+H⁺が
たくさんできます。
脂質が糖質よりも「高カロリー」だということが、
代謝の面からも納得できたでしょうか?
脂質は苦手??
脂質に関する問題は、
生化学と栄養学総論を 合わせると、
過去20年では70%くらいの確率で
出題されています。
とっても大事な三大栄養素の一つなので、
当然です。
ところが、平均正答率は39.6%…💦
試験問題を作成する委員会の先生方が、
「みんな脂質が苦手」と
おっしゃるのも分かります。
でも、栄養指導をするうえで、
「どうして脂質を摂り過ぎないように
しなきゃいけないのか」
「どうして脂質も必要なのか」
を深く理解できていることは大切です。
このコラムが、「脂質が苦手」じゃなくなるための
お手伝いになったらうれしいです✨